今村雅弘復興大臣の発言に対する抗議声明

2017-04-05

今村雅弘復興大臣の発言に対する抗議声明

昨日の今村雅弘復興大臣の記者会見における発言につきまして,
当弁護団として,以下の抗議声明を今村大臣に送付いたしました。

 

今村雅弘復興大臣の発言に対する抗議声明

2017年4月5日

原子力損害賠償群馬弁護団

団 長  鈴 木 克 昌

 

1 昨日4月4日,今村雅弘復興大臣が「自主避難者が福島に帰れないのは本人の責任である。基本は自己責任である。裁判でも何でも,やれば良いではないか,やったではないか。」旨の発言をしました。
上記発言は,避難指示区域外から避難している方々の実情を全く知らないが故の発言である言わざるを得ません。また,それと同時に,上記発言は,後述の前橋地方裁判所の判決を念頭においたものであり,以下に述べるとおり,司法判断を軽視する発言であると言わざるを得ません。当弁護団は,福島県の復興を牽引すべき職責を担う大臣の発言として,上記発言を到底看過することができません。
2 本年3月17日,前橋地方裁判所(原道子裁判長)は,福島県から群馬県に避難した原告などが国と東京電力を相手に提起した損害賠償請求訴訟において,国に東京電力と同等の賠償責任を認めた上,原告となった自主避難者のほとんどの人について,避難することが合理的であったこと,また,種々の理由で避難を継続していることも合理的であることを認めました。
すなわち,上記前橋地裁判決は,自主避難者が避難したことや避難を継続していることは,自己責任ではなく,国に法的な責任があることを認めています。
3 我が国は,三権分立によって成り立っている民主主義・自由主義国家です。三権分立の下では,立法と行政という民主的国家作用によって最大多数の最大利益を追求するとともに,多数決原理を中核とする民主制の過程によって個人が不当に虐げられることを回避するため,司法が個人の権利利益を擁護することになっています。
すなわち,三権分立の下では,行政府は,司法によって具体的な事件を通じて国民の権利利益を擁護すべき判断が下されたときは,その判断を真摯に受け止める必要があります。今村復興大臣の上記発言は,三権分立の理解に欠けているものと言わざるを得ません。
4 更に,今村復興大臣の「裁判でも何でも,やれば良いではないか,やったではないか。」との発言は,その直後に,「それなりに国の責任もありますねと言った。しかし,現実問題として,補償の金額はご存知のとおりの状況でしょう。」と述べています。
上記発言は,明らかに上記前橋地裁判決を念頭に置いた発言です。このような発言は,我々の依頼者が裁判に訴えなければならなかった事情を全く知らないが故の極めて軽率な発言であるとともに,我々の依頼者である原告を侮辱するものであり,弁護団として厳重に抗議します。

以 上

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