ご挨拶
平成23年10月1日
原子力損害賠償群馬弁護団
団長 鈴木 克昌
<弁護団設立の経緯>
本年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所,福島第二原子力発電所の事故は,地域住民数万人の日常生活を奪いました。
本件事故後の収束見込みは未だつかず,事故から半年が経過した現在においても,当県内にも約2000名の避難者が,故郷へ帰還する日を待ち望みながらの避難を余儀なくされていいます。
また,本件事故は,当県内に拠点を置く観光業,農林水産漁業,製造業等広範な分野にわたって,長期間,深刻な風評被害等をもたらしています。
他方で,8月5日に,自主避難者の扱いが不明であったり,賠償金額が極めて低額であったりといった不十分な内容であるものの,いわゆる中間指針が公開されたこと,9月1日に,第三者機関である原子力損害賠償紛争解決センター(以下「解決センター」という。)による被害者からの申立ての受付が開始されたこと,9月12日に東京電力より避難者の方々に請求書等一式が送付されたこと等,被害回復のための制度が一応整備されはじめている状況でもあります。
そこで,9月15日,群馬弁護士会所属弁護士有志(10月1日現在52名)は,約2000名の県内避難者の皆さんや,風評被害等に苦しむ県内事業者等の皆さんが,東京電力から適切な損害賠償を受けられることを目的として,弁護団を結成しました。
<弁護団の活動内容>
現在,避難者の方に送付されている東京電力からの請求書式は,合計242ページにわたる膨大な書類であり,避難者がこれを記載するのは容易でなく,中には,その膨大な書類を見ただけで気持ちが萎えてしまう方もいると思われます。
また,県内事業者等については,どれだけの損害賠償が受けられるのか,未だ不透明なままです。
かたや東京電力は,我が国有数の大企業であり,その保有する情報量や交渉能力は,一般人と比べものにならないほど強大です。
今後,弁護団は,避難者の方や県内事業者等の方から依頼を受け,東京電力に対する損害賠償請求交渉や解決センターへの申立て等の代理を行い,法律の専門家として,被害者の皆さんが適切な損害賠償を受けられるよう,全力で支援します。
これまでは,群馬弁護士会内災害対策委員会が,県内各地で避難者向け・事業者向けの法律相談や説明会の実施や,情報提供を行ってきました。
今後は,個別の事件を受任することで被害者の救済を目指す弁護団と,県内全体への情報提供等を行う弁護士会が連絡を密にしながら,一人でも多くの被害者が適切に救済されることを目指すことになります。
また,原発被害者救済のための弁護団は,本日までに,東京,埼玉,札幌が結成されており,群馬弁護団は全国で第4番目に発足した弁護団です。
群馬弁護団は,横との連絡も密にしながら,全国においても最高水準の被害救済を達成いたします。
<最後に>
弁護士法1条は,「弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。」と定めています。
本件事故は,単に事故によって他人に損害を与えたという類のものではなく,一企業のために多くの被害者が強制移住を強いられるという重大な人権侵害が発生している事案です。
したがって,我々弁護団は,間違っても,中間指針を片手に電卓を叩くような弁護活動に陥ることはありません。
原子力損害賠償は,経済的側面からの人権救済の一場面であることを肝に銘じ,万が一にも東京電力が被害者の弱みに付け込むような事態が生じないよう厳重に監視しつつ,被害者の方々と共に救済の道のりを歩みます。